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しのぶ

第3章 3・嘘つきの顔

 
「え!? 間違った……って、まさか」

「そのまさか! いや、輝が呼び出したかったのは、もう一人の方の元康だったんだけど……ね?」

 もう一人の元康とは、毛利元就の八男である元康なのだろう。笑って誤魔化す輝元だが、この時期に間違いは許される事ではない。国元を開ける元康、目的の元康と会えない輝元、誰一人有利にはならないのだ。元康は、気が遠くなりそうな頭を抱えた。

「だから近しい間で、名前が被るのはよくないって言ったのに……もう、輝様どうするんですか!」

「あはは、そう怒らない怒らない。まあせっかく来たんだから、大坂に残って輝の親衛隊になったらどうかな? そうそう、それがいいよ」

「でも、国の防衛はどうするんですか」

 そもそも元康は、一年前の小山をきっかけにした家内の粛清で勢力を削られている。そのため、この戦では本国の防衛に回っていたのだ。

「ま、黒田はちょっと心配だけど、背後に関しては大丈夫でしょ。立花もいるし、島津も西軍についてくれたし。島津は義弘の単独行動っぽいけど、黒田が動きにくくなるのは間違いないだろうし」
 

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