しのぶ
第3章 3・嘘つきの顔
「どうだろうね。輝も十中八九黒だとは思うけど、ちょっとだけ信じてる気持ちもあるんだ」
ジュストが眉をひそめ首を傾げると、輝元は起きあがる。そしてジュストの頬へ手を伸ばし、つまんで伸ばした。
「固い、ジュストは固いよ! ほら笑って、頭柔らかくして!」
「ふえ、ふぇるもほサマ!?」
「確かに志信は黒くてもね、元康はただ騙されるだけのお馬鹿さんじゃないよ。若くても荒谷城を治めてきた武士だ。その元康が、彼を信ずるに値すると評価しているんだから、あるいは……なんて事もあるかもしれないよ」
輝元が手を離すと、ジュストは痛む頬をさすりながら唇を尖らせる。
「ジュストには、よく分かりません……」
「まあ、これから元康もしばらく一緒だから、お話してみるといいよ」
困惑するジュストの頭を撫でながら、輝元は思案する。今こうしている間にも、時は進む。伏見城での戦いを始めとして、日本中が天下の行く先を探して動いている。
「さて……勝つのはどちらかな」
夜明けは、まだ遠い。小さく揺れる明かりは、未来を照らすほどの強さを持ってはいなかった。