しのぶ
第4章 4・暗躍
そうなると気になるのは、まだ残る局部である。助六は咳払いすると、延々と続く主君の悪口を諫めもせずに早々と読み切った。
「……これは、途中で終わっているじゃないか。花押もない。元康が書いたとは限らないじゃないか」
「私が、小川家の使者ではないと疑いますか? それならばこの話は終わりです。信じて下さる御仁の元へ向かいましょう」
「ま、待て! そう急くな。この異様に長い文、こんなものを書くのは毛利家の血が混じる者だけだ。隆景様も、文は無駄に長かった。お前は確かに、毛利に関わる人間なのだろう」
文をその場に捨て、もっともらしい事を言いながら助六は志信の下半身を覗く。しかしそこはまだ姿を表さず、さほど長くはない「二枚目」の文で隠されていた。
「信じて下さるのであれば……二枚目のこれをお取りください。これは使者ではなく、内通者志信からの贈り物です」
志信が股を少し広げると、下の毛が僅かに見える。助六に、もはや止める選択肢はなかった。
「見せてもらおうか、お前の腹の内も、体もな」
文を手に取るが、助六はその中身より志信を凝視する。想像以上に扇情的な体は、助六の理性を簡単に取り払った。