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しのぶ

第4章 4・暗躍

 
 助六は志信の身を労るように背中を撫でるが、そのうちまた欲が出たのか、手が太腿へと向かう。志信はその手を取ると、助六の耳元で囁いた。

「草野の事ですね。彼は小川家による小山粛清の際、その手から逃れた小山の縁者です」

「小山?」

 聞き覚えのない名前に、助六の欲も引っ込む。首を傾げると、志信は疲れ切った顔を笑顔に変えて答えた。

「小山は小川家に仕える重臣でした。それを元康様は、一度裏切られると恩情なく切り捨て、一族をも根絶やしにしようと牙を向いたのです」

 自らに絡む指が小山を殺したのだとは知らず、助六は元康を蔑視し溜め息を漏らす。

「なんて奴だ。あの暴君織田信長でさえ、謀反人を許す度量はあったというのに」

「草野は仇討ちのため、密かに力を蓄え一揆の準備を進めていました。これが今、小川の領地で起こったら……」

 大きな戦を前にして一揆が起これば、小川家が大打撃を受けるのは明らかである。さらに志信は、後押しの一言を加えた。

「その上、毛利輝元の命により小川の手勢が大坂城へ向かおうとしております。手薄になった荒谷城なら、打ち破る事も容易いでしょう」
 

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