しのぶ
第4章 4・暗躍
「輝様が落ち込まれるのは困るな。まったくあの方は、お優しいんだから……」
「っ、危ない!」
だがその瞬間、ジュストは元康に飛びつき床へ押し倒す。そして元康が驚く間もなく、窓が撃ち破られ一本の弓矢が床へと刺さった。
「っ!」
元康を庇いながら、ジュストはしばらく辺りを警戒する。が、続く攻撃も殺意もない。刺さった弓矢をよく見てみると、それには文が巻き付けられてあった。
「矢文……」
ジュストは弓矢を抜き、文を広げる。だが書かれている悪筆に、眉をひそめてうなり声を上げた。
「あら、やに……?」
「なんだ、お前、文字は読めないのか?」
「違う! ジュスト、この国の事は何でも知ってる。字が汚いだけ!」
侮られたのが悔しいのか、ジュストは顔を真っ赤にして言葉遣いも荒く反論する。必死なジュストに苦笑いしながら元康は文を奪い、目を向けた。
「この字」
確かに、それは読むにも難儀する悪筆であった。しかしそれを、元康は前にも目にした事がある。
「志信の字だ」
「志信!?」
元康が慌てて文を読むが、それは衝撃の内容だった。