しのぶ
第5章 5・真実の影
だがその祈りは、無情にも打ち砕かれた。
荒縄で後ろ手に縛られ、打ち捨てられたように横たわる体。所々から破けた黒装束から覗く、自慢の白い肌が痣や傷で汚れた跡。変わり果てた姿ではあったが、それは確かに元康のよく知る『志信』であった。
「志信……」
呼びかける声は、震えていた。だが志信はそれに気付き、顔だけを上げる。そして元康と顔を合わせると、柔らかな笑みを見せた。
「会いたかった、私だけの主」
「志信……! すまない、今出してやるから、待って――」
「元康!」
牢の鍵に手をかけようとした元康だが、それは息を切らしながら現れたジュストによって阻まれる。ジュストは元康を背中から羽交い締めにすると、横たわる志信を深い青の瞳で睨みつけた。
「コレは善人を甘言で誑かし、地獄へ誘うデーモンのような男。騙されてはいけない」
「志信はそんな人間じゃない!」
「ならどうして、今ココに捕らえられている! コイツは一揆を煽動した黒幕、忘れてはならない!」
元康は抵抗していたが、それを聞くと固まってしまう。さらにジュストは、畳み掛けるように言葉を続けた。