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衝動

第8章 〜夜〜



栞は、尋也の部屋のドアの前にいた。

「合鍵忘れた…」

合鍵はほとんど使ったことがないため、使ってみたかったが、忘れたのではしょうがない。チャイムを鳴らし、尋也を待つ。

数秒後、鍵を開ける音がして、ドアが開いた。

「こんばんは」

言ってみてから、可愛げのない挨拶だと思った。シャワーの後で、少し頭がぼーっとして、笑顔を忘れた。

『こんばんは。』

尋也は満面の笑みである。眩しい。

尋也の部屋は相変わらず物が多い。整頓はされているが、どうしてこんなに物が多いのだろうか。
栞の部屋も、物が少ない方ではないが、ある物といったら本やまんがなどである。

『顔が眠そうだよ…』

「王子様のキスで覚ましてください…」

『ちゅっ…』

「…!?」

冗談で言ったのだが、本当にされてしまった。
本当に目が覚めた気がする。

『…目覚めた?』

「覚めたどころの話じゃないです。」

『…ちゅー』

「…っ…う…」

今日は妙に尋也からしてくる日である。どうしたのだろうか。

『……してもいい?』

「…はい?」

なかなか唐突である。部屋に来てまだ何分も経っていないのに。


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