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衝動

第4章 〜彼との出会い〜

ある日、今日は塾の日で、またあの作戦を実行する日だった。

「あぁ…疲れた」

早く猫に癒されたいと思った。いつものようにマンションの裏へ歩き、猫を膝に乗せて頭を撫でた。

その時、あの高校生がマンションの裏へ来た。

内心、ものすごくびっくりしていたが、顔には出さないように気をつけ、下を向いて、気づかないふりをした。多分それが一番安全だからだ。足音が近づいてきたが、気にしない振りをして耐えるしかなかった。

『…猫……好きなの?』

声に驚き見上げると、目の前に高校生が居た。
流石に驚いた私は猫を放してしまった。

『あ…ごめんね…悪いことしちゃったね』

ちゃんと見たことがなかったけれど、というか見たくもなかったけれど、近くで見ると意外とかっこよくてびっくりした。いつものように制服ではなく私服だった。それにもびっくりした。

「…あ……別に…大丈夫ですよ」

全然大丈夫じゃなかった。近い近い近い。いやそんなに近くないけど近い。目の前にいる。一体今の私はどんな顔をしているのだろうか。

『…いつも下向いて歩いてるからさ…初めてちゃんと顔を見れた気がする。』

そう言って彼はしゃがみ、私と目線を合わせ、優しく笑った。

その時、何かが解けた感じがした。

「…………」

私は、無言で彼を見つめた。彼の細い目が私を見つめている。

『僕は鈴森尋也。僕も猫が好きだから、時々ここに来るんだ。本当に時々だけどね。』

「…………」

私も名前を言いたかったけれど、上手く喋れない。

彼の大きな手で頭を撫でられた。

「やっ……」

思わず払いのけてしまった。怖かった。

彼は驚いて目を見開き、こちらを見つめた。

『ごめんね……』

「あ……」

そんなことするつもりはなかったのに。彼は申し訳なさそうに私に謝った。

「…っ…ごめんなさい…」

私は彼から目をそらした。

彼はゆっくり去って行った。



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