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最後の恋は甘めの味で

第23章 会いに行く

ゆっくりと体を元ある位置に戻そうとした時、鼻に入る優しい匂い。


暖かくて心も穏やかになる。


それとともに近付く足音。


ゆっくりと慎重に音を立てぬように近付くそれは、まるで私を起こさぬようにしているみたいで


先程、危険なんて思った自分が情けなくなる。


ぐっと拳を作り、正座をする。


どんな人であれ、お礼は言わなければ。


深呼吸をし、気持ちを整え終えた頃、開く戸。


私は顔も見ずに頭を下げた。


「あの!ご迷惑を」

「なんだ。起きてたんですか」



..........え.....?



被さるように聞こえてきた声にそのまま固まる私。


どう考えたって聞き覚えがあるその声。


顔を上げれば見えるはずのその顔が脳裏に浮かぶ。


黒髪で少し癖っ毛。


そんな髪に似合う黒目がちの目。


薄い唇は色気を帯びていて.......


その唇に私は何度も.....



って、何考えてんのよ!



頭を振り、雑念を振り払う。

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