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最後の恋は甘めの味で

第5章 最悪の日

一通り話して、佳世がそっかと声を漏らした。



離婚の話とかあの人の話とかはたまた息子の話とか。


全て佳世には包み隠さず話してある。



会社で唯一知っていると言っても過言ではないだろう。


と思ったが、そう言えばあの男も知っていたな。


と思い直す。


「それで、折り返して電話しないの?」

「それってつまりさ、行くって言ってるようなもんだと思わない?」

「あー......そうねぇ」



困ったわと最後に付け足し、んーと考える佳世。


他人のことなのに真剣に考えてくれる佳世。


私は本当にいい同僚を持ったと思う。


すると佳世はぱっと悩むのを止め、明るい顔になる。


「こういうときはあれよ。飲むに限る!」

「.......私、二日酔い真っ最中なんだけど.....」

「吐くくらい飲みなよ。きっとすっきりするわよー?」



吐くって.....



三十路女の吐き姿。

一体誰が得をするのか。



でも、言われてみればそうかもしれない。


この気持ちの悪いもやもやも、最近できた心のぬくもりも全て捨てられるかもしれない。


「私、部署に鞄とか置いてきちゃったから取ってくるね......って暁もか。ついでに取ってくるから」


言うが早いか、ありがとうの言葉も待たず佳世は行ってしまった。

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