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最後の恋は甘めの味で

第32章 初めての..... 前編

これは暗黙のルール。


おれのヤる気がなくなればそれまで。


それ以上、俺にしつこくしてはいけないのだ。


暗黙のルールというだけあって俺はそれを口には出していない。


ただ、一度だけ萎えた俺にしつこくした女を冷たくあしらっただけ。


それが余程怖かったのか、それ以来俺が席を立てば黙る風習ができたらしい。


俺はまるで王様だ。


にやける口元を抑えながら、玄関まで進めば見える雨模様。



げっ.....



と思うも、ぬかりはない。


カバンの中を漁れば出てくる折りたたみ傘。


靴を履き替え、玄関を出てそれを広げた。


一歩外へと踏み出せば雨が傘を打つ音が耳に響く。


さっきの雑音とは比べ物にならない、静かで規則正しい音。


この音が好きで、俺は雨の日、というのが昔から嫌いじゃなかった。


学校への行き帰りは歩きできている。


この音を楽しみながら帰れることに少し心を踊らせた。

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