テキストサイズ

最後の恋は甘めの味で

第5章 最悪の日

私を逃がさないように、私の両脇に手を置いた。


そのための上條くんとの距離はうんと縮まり、少し動けば唇に触れてしまいそうで。


私は数ミリたりとも動けないでいた。


「当たる?俺が、暁さんに?逆でしょ。むしろ当たってんのは暁さんだろ。つーか、俺がアタックしてんのに落ちない女なんていねぇよ」


最後の自信満々の言葉に妙にカチンときた。



なにそれ....!

どんだけ自意識過剰なのよ!



「あん」

「1人を除いては」


真っ直ぐ私の瞳を見つめる上條くん。


その瞳が少し切なそうに揺れた。



なんで

そんな切なそうに....



私は反射的に顔を逸らしそうになる。


「逸らすな」


低く怒気を含んだ声に固まる体。


私の頬に上條くんの指が触れる。


「っ......」


その優しい指に溺れそうになる。


「上條く....!」


彼の名前を呼ぼうとした時、彼の顔は驚きを含んだ。



なに?



その心の問いに答えるように上條くんは口を開いた。


「暁さん、泣いてた?」


不意に聞かれた質問に脳がついていけない。


そのまま無言でいると、上條くんは私の腕を持ち、立ち上がらせ引き摺るようにどこかに歩を進めていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ