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最後の恋は甘めの味で

第6章 高級ホテル

「........嫌です」


たったの4文字。


まるで駄々を捏ねる子供のように不機嫌さ丸出しの上條くん。



なによ、それ



半ば呆れながら私は口を開く。


「じゃあいいわ。このままで。私の質問に答えて頂戴」

「嫌って言って」

「答えて。答えないなら、今ここであなたとの縁、完全に切るわよ」

「.........」


その方法を今言えと言われても具体的なものは出てこない。


けど、その気にさえなればいくらでも方法があることくらい上條くんだって分かるはずだ。


私と縁を切ることが上條くんにとってどれだけのダメージなのかは分からないけど。


私は確信していた。


上條くんにとってきっとこれ以上に嫌なことはないだろうと。


「............」


上條くんは無言で私から離れ、背を向けたままぶっきらぼうに言葉を発した。


「.......どうぞ」

「......ありがとう。上條くん」


私も体を起こし、彼の背を見つめる。


「......ここ、あなたの給料じゃ絶対無理だと思うのだけど.....どうやって......」

「俺の実家金持ちなんで仕送りがー」

「私、ふざけてって言った?」

「.........」


なんとなくありそうな話ではあったがそれが嘘であることくらい私はすぐに気付いた。


「お願い。真剣に答えて」


訴えかけるようにそう告げたのは、もしこの演出が全て私の為で上條くんが無理をしているのなら、申し分が立たないと思ったから。


「別に、この部屋取ること自体は俺にとって無理なことじゃない」


わたしの心を読むようにそう呟いた上條くん。

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