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最後の恋は甘めの味で

第6章 高級ホテル

その言葉はまるで無理をして言っているようで。


でも、私は止めない。


上條くんの事実を知らなければ何も動くことができないから。


「それは、どうして?」

「.........今日来てた社長の話は聞いた?」


いつの間にか敬語じゃなくなっていたが、私は気にせず上條くんの問いに答える。


「えぇ。大手企業の女しゃちょ.....」


そこまで話し、はっとする。



このホテルって確かあの企業系列の......

まさか.....



上條くんの背を見つめる視線をより強いものとする。


「.......その社長からの”副収入”があったんだよ」

「っ!!あなた、社長を抱いたの?!」


ぐいっと肩を乱暴に掴み、こちらに顔を向かせる。


その顔は切なくてどことなく力がないものだった。


「抱いてない。そういう約束はしたけれど」

「っ......なんていうことなの......部長はその場に居たんじゃないの?」

「居たよ。途中までは。いきなり席立ち上がってトイレって言ったっきり戻ってこなかったけど。部長が立った時、一瞬だけだけど社長とコンタクトをとったのも見てた。だけど、何言ったって同じだと思ったからそのまま」



っ.....!



つまり部長は自分の利益のために上條くんをダシにするだけではなく、上條くんを社長に売ったのだ。


許せない。


許せる筈がない。


上條くんの実力には計り知れないものがある。


そんなことのために使う人材じゃない。


私の腸は煮えくり返るようで、鞄の中から携帯を乱暴に取り出す。


そのまま画面に履歴欄を映し出した所で、上條くんの手が私の携帯を掴んだ。


「暁さん」

「離して。あなたが許しても私は」

「暁!!」


呼び捨てにされたことにより、熱くなった感情は冷めていく。

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