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最後の恋は甘めの味で

第7章 事実

気持ちは分からなくもないが、もう少し小さく息を吐け



思うも口にはしない。


言えば倍どころか10倍くらいで返ってくる。


「女らしくないとか思ってんでしょ?どーせ。っていうかこの部屋暑くない?」

「.......」


口に出さずとも返ってくるらしい。


上着を脱いでパタパタと手で仰ぐその姿には女のおの字すらない。


「.......お前、相変わらずだな」

「あら、そんな風に言っていいのかしら?あなた、私に売られたみたいよ?」


ケラケラと下品に笑う涼とはある居酒屋で混んでいた時に隣になったことで意気投合し、それからの腐れ縁だ。


さすがに雑誌で若手女社長として出ていた時はびっくりした。


でも、俺と接する時、涼はそういうのを全く匂わせないからこっちも好き勝手やってる感じだ。


「相変わらずって真也だってまだそんな底辺にいるの?」

「アホか。入社してたかが2年でなんか変わると思うか?」

「あら、私は入社して1年で社長よ♡」


この女はアホじゃないのか。


自分で企業を立ちあげて、社長にならないやつなんていないだろう。


「そうよ。あのバカ部長。アレに変わってあなたがあの席に行けばいいじゃない」


ケロッと普通の顔して言う涼。


そうできるものならそうしてる。



でも、そんなことをしたら......



俺の様子を見て、涼の口元に笑みが生まれる。


「なに?いい女でも見つけた?」


あまりにストレートな質問に少し止まる俺。


「なになに?この会社の人?」


ワクワクしながら待っている涼には悪いが俺にはそんな女はいない。

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