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最後の恋は甘めの味で

第7章 事実

「ねぇな」


俺はスパっと言い切り、事務員の方が入れてくれたお茶を頂く。


「ふーん......?」


涼もその言葉を最後にそれ以上、その話題を引っ張っては来なかった。




結局部長はそれから一度も顔を出さず終了。


仕事の話もほどほどにお互いの近況の方が話していたかもしれない。


そんなこんなで気付けば、俺の終業時間になっていた。


帰り間際に涼がふと思い出したように足を止めた。


「そういえば私、あなたを買ったんだったわね。何もしないのもあれだし、そうねー.....はい」


と胸ポケットに入れられたのはどうやらカードのようで。


取り出して見てみれば都内高級ホテルの最上階に程なく近い部屋のカード。


そう言えば、こいつが立ち上げた会社はホテル専用物品販売だったような......。


まさかこんな高級ホテル相手に商売していたなんて夢にも思っていなかったが。


「.......職業乱用」

「違うわよ。そこの社長さんがこれからもどうぞ宜しくってくれたの。まあ、私は一緒に行く相手もいないので?勿体無いからモテ男にあげるわ。そういえば私、あなたに抱かれたことなかったわね。じゃあ、それ使ったら抱きに来てね♡じゃ」


颯爽と歩き出す涼の背中がたくましく見えて仕方なかった。



涼を抱く、か



涼は綺麗で強くてすごく魅力を感じるけど俺の中でそういう存在じゃない。


し、そういう存在になって欲しくない。



使うことねぇだろうな。



なんて思い、カードを再び胸ポケットにしまった。

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