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最後の恋は甘めの味で

第7章 事実

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そんな自分が懐かしいと思うほど、カードをあっさりと使った俺は、現在ホテルとは反対方向のBARにいた。




前戯で泣かれ、1回イっただけで即寝。


興奮していたはずの下半身も萎えに萎えた。


なぜだかいたたまれなくなり、彼女を一人ホテルに置いて、外に出た俺。


高級ホテルを見上げ、そういえば使ってしまったな、と思う。


律儀にも携帯を取り出し俺は涼を呼び出した。


「.......抱いてやるよ」

「あら、もう使ったの?さすがモテ男ねー。どうする?直でホテルに」

「いや.....」


そうして提案したのが、俺が今いるBARだった。




はぁ、と隣の席から溜息が漏れる。


「有り得ないわ」


一通り話を聞いた涼から一言。


「何がまずありえないってね、彼女をそこに一人置いてここに来たあんたよ。何が”抱いてやるよ”よ。寝言は寝てから言いなさい」


涼の一つ一つの言葉が胸に突き刺さる。


「そんなことのためにあのカードを渡したわけじゃないわよ」

「.......分かってる」


何も返す言葉がなく、頼んだカシスオレンジを一口飲む。


涼はそれを横取りし、一気に喉に流し込む。


「電話かかってきて、一言。”抱いてやるよ”。柄にもなくこんな洒落乙なBARに呼び出すもんだから本気で期待したのに待っていたのは抜け殻。はぁ......私も男運無さすぎね」

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