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特別刑務所(仮)

第22章 瀬川。

姉が習っていたピアノがやりたいと母に頼むと最初は渋ったが弟もやりたいとその一言で習わしてもらえた。
だけど、そのピアノですら敵わない。コンクールはいつも2番目。

「おい、希沙。」
「なに?朔」
「俺が唯一負けてるのはお前のあとに生まれたことだ。」
「・・・・・・」
「ほんと、嫌になるよ。父さんが言ってただろ?一番じゃなきゃ意味がないって。ねーさんは長女、お前が長男、俺は次男だ。お前が死ねば俺は長男になれるのにな」


そう言うとおもちゃのナイフで何度も俺を刺す。
切り傷こそつかないが殴られるのと同じように刺してくるので身体中がアザだらけだった。
それを一度だけ父に助けを求めると、お前のようなでき損ないはとっととくたばってしまえば良いと投げ捨てられた。
その日の夜、まるで俺なんかいないかのような食卓があった。
俺の座る椅子は片され、俺のご飯もなく、母に訪ねても返事はない。

「俺は必要ないんだ。」

その日から幸せそうな人を見ると異常なまでに嫉妬を覚えた。
最初は怪我をさせるとか、大切なものを壊すとか本当に簡単なことだった。

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