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メビウス~無限∞回路

第3章 迷走する魂

 どうしてこのお兄ちゃんは、僕に声をかけてきたのだろう。
 僕の不思議そうな顔に、お兄ちゃんは気がついたみたいで、触れ合うことはもうないのだろうと思っていた。諦めてさえいた僕の頭に触れる。―――おひさまみたいな優しい光が僕の周囲に広がった。

「なんだ?」

 もうひとり後ろにお兄ちゃんが立っている。僕は誰が味方で誰がそうじゃないのか、わからなくなっていてただ怯えている。けれどもうひとりの小さいお兄ちゃんは、目が痛くて見られない。

「霊圧さげなさい…怯えているじゃないですか?」
「神楽に言われる前に押さえているっつーんだよ」

 霊圧って、何なのか分からない僕に神楽と呼ばれたお兄ちゃんはしゃがんで、僕の頭を撫でながら笑ってくれる。それを嬉しいと思うぐらい、僕の時間の中で触手との鬼ごっこは長かったんだ。

「しかし、これはまたえらく…嬲られていたみたいだな」
「…怖いよ、…お兄ちゃんたち逃げてっ!」

 明るいお兄ちゃんが触れようとした背後から、触手の呼吸音が聞こえた。
 せっかく僕に話しかけてくれた。
 優しくしてくれたお兄ちゃんたちが、酷い目にあってしまう。

 それは嫌だ。とっても嫌なことだった。

「お兄ちゃん、逃げて!!」

 声を限りに叫んだのに、お兄ちゃんたちは一歩も動かずにいた。

「そうか、とても怖い思いを独りでしていたんだね」
「家族のところに送ってやるから!そこでお兄ちゃんたちの活躍を見ているように!」

「尊、…言ってて恥かしくないですか?」

 明るいお兄ちゃんは、瞬間とても恥かしそうに顔を赤く染め。僕へと手を伸ばしてくれた。

「こいつが片付いたら、お兄ちゃんたちが家族のところへ送る手助けをしてやるから」

 照れていたのか、頭にのせられた尊お兄ちゃんの手は乱暴に僕の頭を撫でる。けれどお兄ちゃんたちだけでどうやって、あの触手と戦うのだろう。

「大丈夫ですよ、此処に居なさい…」

 言いながら僕が立つ周囲に、何か光る文字を描き始めた。

「優しいね」
「君は可愛いね、とっても可愛いです」

 僕を光の輪っかの中に入れると、軽くもう一度頭を撫でてくれた。

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