メビウス~無限∞回路
第3章 迷走する魂
触手は僕を探していた。
怖くて怖くて目を閉ざして、顔を背けて、走り出したい気持ちで一杯になってくる。
「絶対に、其処から離れないで下さいね」
繰り返し繰り返し、逃走したい心に囁くみたいに言ってくれた言葉。僕が信じるか、信じないかが大切なのだと言った。
僕は信じる。信じる力なら僕にだってあるんだ。
お兄ちゃんたちは負けない。
だって、僕を助けに来てくれたヒーローなんだから。
「疾風(かぜ)を切り裂け!いい子はお家に帰って手を洗いうがいして寝てろっ!!」
七色の光だった。
七色の光が虹みたいに輝いて―――弾けた。
それはとても綺麗な光だったんだ。僕は今まで見たことがないぐらい。
とても明るくて綺麗な光。
「お兄ちゃん達すごいねー、どこの国のヒーロー??」
どきどきわくわくして聞いた僕の頭に尊お兄ちゃんが、何度も何度も撫でてくれた。
「お兄ちゃん達は、天国からのヒーローだよ」
「天国?」
ぷっと音がして、振り返ると神楽お兄ちゃんが笑うのを我慢していた。
「何笑っているんだよ!」
「だって………くっ、ぷっ……くくく…っ」
我慢しきれないみたいな笑い方だなぁと、思っているとお兄ちゃんが僕の頭を撫でてくれた。
「じゃ、アホはほっといて…家族のところへ還ろうか?」
「うん!!」
お父さんがよく飲んでいたお酒の匂いがする。尊お兄ちゃんが白い瓶の蓋を開けて、それを手で受け止めていた神楽お兄ちゃんがお酒で、僕の前に新しい絵を描いた。
何かの記号みたい。
そう思った瞬間に、尊お兄ちゃんが僕の前で何かおまじないみたいな言葉を言い出した。