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硝子の挿話

第7章 徒花

 科学が生まれたのは、中期の激しい生存戦争が発端だった。それから既に太陽の周りを幾度巡ったか解らない。その中で欲求は強くなり、この国を間違えた誇りが、覆い被さっているようにティアには思えるのだ。


‐我々は特別なのだ‐


 感覚を狂わせる権利、利益に対する邪心はとても強く。欲望は日夜強くなるばかりだ。王都や一部神殿関係者にも居るのが実情だ。そのせいか大切なものを見落とした感覚は、余りにも強くて危惧が襲う。この異常気象の繰り返しは、とても怖いのだと、ティアは伝えたかった。
 自然が人間を見放し始めているのだと、南西海岸に広がる広大な珊瑚礁の白化。海水温度が確実に上がっているはずだ。

「神罰が―――恐い」

 ティアは一抹に覚えた風の中、不安を殺すように瞳を閉じた。
 星祭が近づく最中、どうしてこんなに不安が、心を焼いているのか分からない。眠っている時、祈りを捧げている時、不意に刺す不安。どう言葉にしていいのか迷う度に、酷く気分が悪くなるのだけれど。
「無事星祭を終えるのか…不安…」
 サイティアはそのまま、沈黙を守りつつ、ティアの後ろを同じ速度で歩く。出される言葉に心を傾け、未来を考えるがこの先をヒトはどう辿るだろう。―――貧富の差が与える社会影響。





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