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硝子の挿話

第7章 徒花

 顔を隠した男達が、まっすぐティアを見ている。
 恐らく筆頭者であろう男が、目配せで合図を出すと、三方から剣を切りつけてきた。
 此方は三人。人数で勝っていることに安堵しているらしい。薄笑みを浮かべて開いた輪を縮めてきた。
「一人は完全に仕留めろっ!」
 溜息をつき、とりあえず活路を見出すために、腰に下げていたサーベル剣を抜き中段に構える。まっすぐに伸ばした腕。気迫を示す眼光が鋭く、敵を距離を威圧した。

「死ねっ!」

 間近に響く金属音。生きてティアを手に入れたいのか、殺してでも手に入れたいのか。それだけは計らなければならない。
 剣を受け止めると、摩擦された火花が飛び散る。
「………っ」
 ―――死闘が今、始まり告げたかに見えた。
 ティアはこのような目に遭うのは初めてではない。小さく呼吸を繰り返しながら、自分を抱き寄せているユウリヤの腕を、さりげなく外す。ドレスの裾で隠れた足を静かに砂地に馴染ませていた。
 サイティアが隙を探し、ユウリヤが距離を作る。ティアは周辺の気配全てに意識を向けていた。
 首領と思われる男が動くと、ティアの微かな隙を見逃すはずもなく、首領はユウリヤをすり抜けて、無防備なティアの腕を掴んだ。

「「っ!」」

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