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硝子の挿話

第8章 理由

 衝動で決めたことではないのに、巫や神官の一部には偽善者だと罵られた。
 しかし自然災害の少ない領土に暮らす水耀宮であれば、上が少し我慢をすれば治水なども十分出来るし、生活苦にある住民に対応も出来る。少しでも安定のある生活で日々の糧に送ってほしいと願っている。
「たとえどれだけ罵られても、私は間違っていない…」
 とても普段に見せている気弱さがない。気負っている気も見られるが、困難で荊の敷き詰められた道を裸足で歩いているようだと思った。
「毅いな…」
 女性は全て毅いのだろうか。ユウリヤは苦笑してしまう。政治のことは全く分からないが、迷走しようとして時代に楔を打とうとする姿勢は、男女の枠を超えて感嘆の息をついてしまう。
「あ、ありがとうございます…っ」
 問題があるとすれば、水耀宮は血の流れを事のほか重要視しており、全てを親から受け継ぐ。
「なんだか自分を誇れるような気がします…ね、………少し照れてしまいますが」





 真っ赤になって笑う姿。巫ならば美しければ叶う。しかし神子だけは星見が選びだすという辺りで、自らを上流と誇る彼らを知らずに傷つけたのだろうと推察はしていた。
「あ、そろそろ私…戻らないと駄目ですね」
 軌道に沿い落ちていく太陽の位置と影の長さを目で測る。立ち上がり、裾と座っていた部分の埃を払う。
「…あれ?」

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