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硝子の挿話

第8章 理由

 我慢していた涙が、勝手に大地へ降っていた。
 空さえもティアの心に反応し、黒い雲を広げ始めている。もう其処まで雨が降りてきそう。

「…っく…ひ…ぇ…」

 自分が悪いなら、どこが悪いか言ってくれれば、改めてなおす努力も出来るけど、無視や嘲笑されるだけでは、何が悪いのかさえ分からない。
 分からないのは努力が足りないからなのか。………泣くしか出来ない自分がどんなに嫌いでも、自分は自分以外の誰にもなれない。心が痛いと感じることさえ、間違いなら自分という存在は、なんの為に生きているのだろう。
「言って下さらないと…分かりません………」
 ティアは後から後から、沸いてくる感情の始末に選ぶのは、涙を流すという浄化の道。

「…すまない」

 同じように足を止め、顔を反らして呟いたタルマーノの護衛制服の袖に、思い切りしがみついた。





 巫達とも神官とも上手く付き合えず、自分を保護してくれていた司祭ももう神殿から退き居ない。

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