硝子の挿話
第9章 滄海
寧ろどちらかというと、騎士団に未来を見ていたのだろう。特にティアの身体能力値も異常と言えば異常だった。
もしかしたらそれさえも、神の恩恵だったのかも知れないが。
「ティアは大人になったら何になりたい?」
戻ってきたティアに身体を拭く布を差し出し、サイティアは聞いてみた。
「ティアはね、サイ兄さまのお嫁さんになるの!それでねー、騎士団で偉くなって、タルマーノをお嫁さんにするの」
満面に花を咲かすみたいな愛らしい微笑を浮かべる。―――きっと両方を手に入れるのだと、本気で思っている。サイティアは見上げて反応を待つ髪をそっと撫でた。
「そっか、きっとティアなら望みを叶えるな」
それぐらい力強い信念を、サイティアは感じていた。
まっすぐで曲がることを嫌う性格は、きっと彼女の父親に似たのだろうと思いながら。愛しさが募る気持ちは、空に輝く星々の煌きと似ているのではないかと思った。
多分きっとこの時点で、サイティアの気持ちはぼんやりとあったのだろうと思われる。
「あのね、ティアはねサイ兄さまとタルマーノが居て、両手が釣り合うの!」