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硝子の挿話

第10章 交錯

「俺が決めた…俺だけが選んだ道に誰も文句は言わせない」
 限界まで研ぎ澄ませた刀身が、雫を滴らせ月夜に晒される。そんな空気を感じ、ユウリヤはただの覚悟や気概で決めた道ではないことを知った。

「俺でいいのか?」
「ティアを泣かせなかったら、俺にとっては誰だって一緒だ」

 正直心からの祝福が出来る自信はない。吐き捨てられる本心に、ユウリヤはようやく薄くではあるが笑みを履いた。
「俺は欲しいものは手に入れたい性質だが、お前は欲しいものを他人に委ねることが出来る性質だということだな…」
 独り言に呟く。しかしそれをサイティアに聞かせたい訳ではなく、自らを納得させたい為の呟きだった。
 すべからく違うのであれば、理解できない部分があって当然だと、ユウリヤは逆巻く嵐に向かい眼を凝らしているサイティアの姿勢を、少しばかり理解できたような気がした。

「さっきの男もティアが好きなんだろ?」

 暗い眼差しで睨みつけてきた。確認を取りたくて聞くと、サイティアは小さく頷くことで返してくれた。

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