硝子の挿話
第10章 交錯
蒼から紺への階調は、月空宮の騎士が普段身に纏う制服で、相手が誰なのか。直ぐに分かってティアはゆるりと笑みを刻んだ。
「こんばんは、ハクレイ様」
長身の細いながらも均整の取れた肢体に、毅い意思を宿して輝く大きな瞳が笑みを見せた。
「こんばんは、お元気そうで何よりです…こんな時間なので明日にしようかと思ったのですが、サイティア殿に勧められるまま来てしまいましたよ」
仕草のひとつひとつに無駄のない。きびきびとした足取りでティアの前に膝を落とす。差し出された手の平に額を軽く押し当てた。
下位の者が慕う上位の相手に敬愛の挨拶をする時に使われる礼式。
ティアは擽ったそうに受けると、満面の笑みを広げた。
穢れのない白を連想をする笑顔に、ハクレイは久方ぶりに会うティアにひとつの書状を差し出した。
封の裏を見ると暗号化された文字が見える。小首を傾げながら開けると四つに畳まれた手紙が出てきた。
「返事は急がれますか?」
「いえ、急ぐ訳ではないですが…こっちでちょっと悶着がありまして」
苦笑してハクレイが言うと、落ちてくる髪を耳に掛けながら月明かりの下で、改めて内容に目を通した。
近くで輝く月は大きく、また明るい。今夜みたいな満月の下であれば、明かりなど必要がない。
十分に内容は読み取れた。
「ユラちゃんが…」
「こんばんは、ハクレイ様」
長身の細いながらも均整の取れた肢体に、毅い意思を宿して輝く大きな瞳が笑みを見せた。
「こんばんは、お元気そうで何よりです…こんな時間なので明日にしようかと思ったのですが、サイティア殿に勧められるまま来てしまいましたよ」
仕草のひとつひとつに無駄のない。きびきびとした足取りでティアの前に膝を落とす。差し出された手の平に額を軽く押し当てた。
下位の者が慕う上位の相手に敬愛の挨拶をする時に使われる礼式。
ティアは擽ったそうに受けると、満面の笑みを広げた。
穢れのない白を連想をする笑顔に、ハクレイは久方ぶりに会うティアにひとつの書状を差し出した。
封の裏を見ると暗号化された文字が見える。小首を傾げながら開けると四つに畳まれた手紙が出てきた。
「返事は急がれますか?」
「いえ、急ぐ訳ではないですが…こっちでちょっと悶着がありまして」
苦笑してハクレイが言うと、落ちてくる髪を耳に掛けながら月明かりの下で、改めて内容に目を通した。
近くで輝く月は大きく、また明るい。今夜みたいな満月の下であれば、明かりなど必要がない。
十分に内容は読み取れた。
「ユラちゃんが…」