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硝子の挿話

第10章 交錯

「………出来れば、その『影あそび』は危ないと思いますので止めてあげて頂けますか?」

 水耀宮の神殿奥深くにある所蔵書庫の中に、体現する能力について記された本がある。内容のひとつに短命だった水耀宮の神子が『影あそび』だろう術を使い過ぎたことで、精神と肉体が剥離してしまったことが記されていた。
「前回お貸しした書物の中にあるのですが…、命に触る危険な『奇跡』だと記されていたのです」
「あ…申し訳ない!まだ中身は読んでなくて………」
 明るい月夜にもわかるほどの狼狽と、赤面するハクレイにティアは小さく笑い頷いた。
「私は一度目を通しているに過ぎませんから」
 だから恥じ入る必要はないのだと伝える。ハクレイにもその意思はすんなりと届いたのか、頷き微笑を見せてくれた。

「でもそう考えますと、かなり秘めた能力値も高いやも知れません…」

 二人にとっては嬉しくないことだろう。けれど虚実を願うことで、退けていい問題ではない。現実は受け止めなければならない。ありのままを受けとめて、先を考えることが最終的に一番の近道になる。
「ユア様には『諾』とお伝え下さい」
「了解しました」

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