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硝子の挿話

第2章 刹那

「じゃあ、着替えて来いよ」
 パジャマ姿でにこにこ嬉しそうに笑う妹の姿に苦笑していると、頷き立ち上がって楽しそうに部屋へ着替に行く。
 部屋に戻ると洋服ダンスから、薄いピンク色のニットのハイネックと、足首まであるフレアースカートをはいた。全身が映る鏡でチェックし、長い髪を結わえることなく、櫛で整える。全身を確認してリュックを背負い………出来上がりだ。
 千遼の方も手に、ぶら下げていたヒップバッグをつけ用意万端。
「行こうぜ」
 幾分キツク感じる千遼の瞳が優しい。―――二人は電車を乗り継ぎ、市内の老若男女問わず集まる街まで足を伸ばした。
 若者をターゲットとした店も多くあり、夏休みと思われる男女が道を流れていた。
「音楽CD見に行きたいかも…そろそろ好きなバンドが一枚出すんだよな」
 横道反れた辺りにある小さな店。その趣味の人間が休みの日になると集うインディーズをメイン販売している。千遼は二年前から縁があってバンドを組み、そこでヴォーカルをしていることも千尋は知っている。少しづつだが売れ出しているという話も聞いていた。

「構いませんよ」

 千尋も音楽は好きだ。ただ聞くのは、ビバルディやモーツアルトなどのクラシックや癒し系のものだが大半を占めている。 趣味までもが逆な二人。
 道合は夏休みのせいか、駅前ほどの流れはないが、それでも地元を歩くよりは人通りは多い。どこからこの流れが来るのだろうと、考えていても仕方がないのだけれど………。

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