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硝子の挿話

第11章 予感

 まだ夢の欠片を集めている最中で、全てを暴露してしまう事で、彼に危険が及ぶかも知れない。逆に呆れて愛情が離れてしまうかも―――知れない。離れるだけでなく、軽蔑の視線を向けられた時、自分は生きていることなど、―――出来ない。
 唇を開きかけて、閉じる仕草を繰り返す。
「……」
 ティアの意志が固まるのを、ユウリヤは沈黙で守る。鍵を握っているのは、現状ではティア自身だ。決意のない言葉が形になるのには、時間がかかることはユウリヤ自身が知っていた。
 愛別離苦を、黙って聞いてくれたティアだからこそ。―――待てる。
 時間が静かに流れていく。
「…本当は聞いて欲しい。けれどまだ色々な問題があって、欠片を集めている最中だから………きちんと言えないです」
 まっすぐに反らさずに伝えられた言葉に、ユウリヤは苦笑を返事として頭を撫でた。





「大変な事が起こる前に、…ううん、そうじゃないですね」
 頭を振ると長い髪が、ぱさぱさと揺れる。ユウリヤは黙ってティアの肩に手を置いた。
「…いつか話してくれるか?その胸に持つ重荷を」
 ティアはユウリヤを見る。まっすぐに反らさず、鍛えこんだ感情のコントロールは、自分さえ騙せる。唯一の武器であり、防具である鉄壁の微笑。
「はい」
 ふわふわと空を漂う真っ白な、雲のような笑みを浮かべた。

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