硝子の挿話
第11章 予感
「少しだけ聞いてもらうなら……私は『怖い』のです…」
呟いて、少しでも仕草から気取られないように、ティアはユウリヤの胸に額をよせた。
「…恐いのです……とても…」
それは嘘じゃない。
夢にしては、感覚まであるリアルな地獄絵図。そこをさ迷う人々は、絞りだすように阿鼻叫喚に大地に呑まれていく。深夜に幾度、その夢で目が覚めたか分からない。
思い出す度に全身が凍り、冷汗と意識さえ混濁させるほど、強い耳鳴りは、…恐怖だった。
それはティアが見る『真実』のひとつ。このまま進めば、いつ急変した事態に陥るかも分からない。
危険を促すティアを、誰もが戯言だと聞き入れてはくれなかった。
サミアとユア。同じ神子である二人と、橋を掛けてくれるハクレイ以外。だからこそ描いた夢の欠片でもあった。
姫神子とまで謳われる身で在りながらも、孤独だけは痛烈に響く。民に警戒を訃(つ)げる手段は、全て神官らによって閉鎖されてしまっていたからだ。
「…俺が守る」
耐えて震えるなら、この腕で強く抱き締める。震えるを止めるのは自分の仕事であって欲しい。
「俺が守る」
もう一度伝える一言。溢れる幸福感と背中合わせに感じる恐れ。手を一度でも離してしまえば、二度と還って来ない気がした。
呟いて、少しでも仕草から気取られないように、ティアはユウリヤの胸に額をよせた。
「…恐いのです……とても…」
それは嘘じゃない。
夢にしては、感覚まであるリアルな地獄絵図。そこをさ迷う人々は、絞りだすように阿鼻叫喚に大地に呑まれていく。深夜に幾度、その夢で目が覚めたか分からない。
思い出す度に全身が凍り、冷汗と意識さえ混濁させるほど、強い耳鳴りは、…恐怖だった。
それはティアが見る『真実』のひとつ。このまま進めば、いつ急変した事態に陥るかも分からない。
危険を促すティアを、誰もが戯言だと聞き入れてはくれなかった。
サミアとユア。同じ神子である二人と、橋を掛けてくれるハクレイ以外。だからこそ描いた夢の欠片でもあった。
姫神子とまで謳われる身で在りながらも、孤独だけは痛烈に響く。民に警戒を訃(つ)げる手段は、全て神官らによって閉鎖されてしまっていたからだ。
「…俺が守る」
耐えて震えるなら、この腕で強く抱き締める。震えるを止めるのは自分の仕事であって欲しい。
「俺が守る」
もう一度伝える一言。溢れる幸福感と背中合わせに感じる恐れ。手を一度でも離してしまえば、二度と還って来ない気がした。