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硝子の挿話

第12章 眷恋

 店員を呼ぶと、先ほどの少女が水を持って聞きに来る。
「これとこれ、それに葡萄酒を先にひとつ」
 頼んだのは酒と魚料理、野菜と果物が豊富に使われた料。店員の少女は一礼し、献立項目板を持って去っていく。
 少女が居なくなるとティアは、この街の話をユウリヤに聞かせて欲しいとせがんだ。





「わかった…」
 ひとつひとつを語るユウリヤは惜しむことなく、せがまれるまま聞かせた。
 暫く会話が弾んでいると、足音が近づいてきた。

「お待たせ致しました」

 二人三人が食事を手に歩いてくる。彩り鮮やかな料理は香りよく運ばれてきた。
「ありがとう」
 こんなに楽しい食事は、本当に久方ぶりだ。ティアは心の中で描く風景に、今自分が居ることが誇らしい。
「…美味しいです」
 果物の甘さが、香辛料を中和した料理はくどくない。芯まで柔らかくなった野菜も美味しい。

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