硝子の挿話
第12章 眷恋
ティアは前司祭が亡くなってからは、常にひとりで食事を取っている。誰も居ない空間で取るのは本当に寂しいとティアは思う。ゆっくりと確かに流れていく時間を噛み締めて、ティアは食事を進めていった。
料理は楽しいし、とても美味しいのだが、皿に盛られた料理は、多分一人前の量ではなかった。
「ご馳走様でした」
「…食べ、過ぎないか?」
既に食べ終わっていたユウリヤは、その細い身体のドコに、これだけの量が入るのかと目を見張る。若干細すぎるから、少しでも肉がつけばユウリヤも嬉しい。けれど無理に詰め込めば、逆効果になりそうでそう聞いた。
「いいえ…不思議です。食材は同じなのに、…私、今日初めて、こんなに食べれました」
ひとりで取る食事は、どんなに高級な食材であっても、味なんか感じたことがなく。
もしかしたら、舌の感覚がおかしいのではないかと、ティアは自分で思っていた。
「…さすがに少し…お代わりは、出来ませんけれど…」
照れながら小さく舌を出した。
「そうか…」
嬉しそうにユウリヤが笑う。
伸ばした掌に片頬乗せて、細める瞳に、ティアの心臓が飛び跳ねてしまった。
いつもよりも優しい眼差し。
いつもよりも身近に感じる存在。
鼓動は意識もせず、早く脈を打ち、ティアの根底には枯れることのない恋の泉が湧いてくる。側に居るだけで。発見する度に、温かいのに、何処か切ない気持ち。
二人は揃って、窓の外を眺めている。それすらも夢であるようで、―――願わずにはいられない。
【夢なら覚めないで欲しい】
優しい想いを胸に、瞳を軽く伏せた。
「祠堂以外は、どこに行きたい?」
不意に現実へ戻ったユウリヤが、目の前に座るティアの頬を撫でる。
「…丘の上に…一度だけ行ってみたいです」
他の巫が話しているのを聞いたことがある。この先にある丘の上に、樹齢が分からない大木がある。その下で恋人と触れながら言葉を交わすと、『永遠に続く』と伝わっていると言っていた。
そういう縁起を担ぐような逸話は、年頃の少女には憧れがあるらしい。
「いいよ。行こうか…」
料理は楽しいし、とても美味しいのだが、皿に盛られた料理は、多分一人前の量ではなかった。
「ご馳走様でした」
「…食べ、過ぎないか?」
既に食べ終わっていたユウリヤは、その細い身体のドコに、これだけの量が入るのかと目を見張る。若干細すぎるから、少しでも肉がつけばユウリヤも嬉しい。けれど無理に詰め込めば、逆効果になりそうでそう聞いた。
「いいえ…不思議です。食材は同じなのに、…私、今日初めて、こんなに食べれました」
ひとりで取る食事は、どんなに高級な食材であっても、味なんか感じたことがなく。
もしかしたら、舌の感覚がおかしいのではないかと、ティアは自分で思っていた。
「…さすがに少し…お代わりは、出来ませんけれど…」
照れながら小さく舌を出した。
「そうか…」
嬉しそうにユウリヤが笑う。
伸ばした掌に片頬乗せて、細める瞳に、ティアの心臓が飛び跳ねてしまった。
いつもよりも優しい眼差し。
いつもよりも身近に感じる存在。
鼓動は意識もせず、早く脈を打ち、ティアの根底には枯れることのない恋の泉が湧いてくる。側に居るだけで。発見する度に、温かいのに、何処か切ない気持ち。
二人は揃って、窓の外を眺めている。それすらも夢であるようで、―――願わずにはいられない。
【夢なら覚めないで欲しい】
優しい想いを胸に、瞳を軽く伏せた。
「祠堂以外は、どこに行きたい?」
不意に現実へ戻ったユウリヤが、目の前に座るティアの頬を撫でる。
「…丘の上に…一度だけ行ってみたいです」
他の巫が話しているのを聞いたことがある。この先にある丘の上に、樹齢が分からない大木がある。その下で恋人と触れながら言葉を交わすと、『永遠に続く』と伝わっていると言っていた。
そういう縁起を担ぐような逸話は、年頃の少女には憧れがあるらしい。
「いいよ。行こうか…」