硝子の挿話
第12章 眷恋
勘定を済ませて、再び手を繋いで二人は丘に向かった。
街からそう遠くない場所に、目的の大木がある。それは遠目で見ても分かるぐらいに立派なガジュマル。
世界は彩をまだ失っておらず、鮮やかな緑は縦に横に広がっていた。
涼やかに思う風に、流される髪の一本一本さえ、隣で立つユウリヤを『好き』だと伝えているみたいだ。
見上げてそんなことを考えているティアから、頭ひとつ分高い位置のユウリヤが笑顔を向けた。
「幸せです…」
ティアが呟くと、ユウリヤは返すように、握った手を強く握りかえしてくれる。
逸話にふさわしい風景に、暫く見入ってしまう。
精霊が住まう聖樹でもあり、幹は幾つも分岐され、褐色の気根が垂れている。垂れ落ちる気根が自身の幹に絡み付いて育つ為に、見た目も派手だ。気根は幼い間は細いのだが、成長すれば太く幹のように樹皮が発達する。大地に達すればもう幹と区別が付かないほどだ。
枝から緑を天に向かい伸ばしていた。樹齢だけでも数百は達してそうに見えた大木は、神を宿し神々しく風に揺られていた。
「コレに会いに来たんだろ?」
大木に近づいて、繋いだ手を軽く引き、すぐ後ろにいたティアを振り返った。
ティアはみるみる紅くなり、耳や首筋までを薄紅に染める。もしかして目的を知られてしまったのだろうか。
動きを硬直させ、ユウリヤに強張った笑みを向ける。思った通りの素直な反応に、ユウリヤはふっと笑う。握った掌が汗ばんでしまっていた。
街からそう遠くない場所に、目的の大木がある。それは遠目で見ても分かるぐらいに立派なガジュマル。
世界は彩をまだ失っておらず、鮮やかな緑は縦に横に広がっていた。
涼やかに思う風に、流される髪の一本一本さえ、隣で立つユウリヤを『好き』だと伝えているみたいだ。
見上げてそんなことを考えているティアから、頭ひとつ分高い位置のユウリヤが笑顔を向けた。
「幸せです…」
ティアが呟くと、ユウリヤは返すように、握った手を強く握りかえしてくれる。
逸話にふさわしい風景に、暫く見入ってしまう。
精霊が住まう聖樹でもあり、幹は幾つも分岐され、褐色の気根が垂れている。垂れ落ちる気根が自身の幹に絡み付いて育つ為に、見た目も派手だ。気根は幼い間は細いのだが、成長すれば太く幹のように樹皮が発達する。大地に達すればもう幹と区別が付かないほどだ。
枝から緑を天に向かい伸ばしていた。樹齢だけでも数百は達してそうに見えた大木は、神を宿し神々しく風に揺られていた。
「コレに会いに来たんだろ?」
大木に近づいて、繋いだ手を軽く引き、すぐ後ろにいたティアを振り返った。
ティアはみるみる紅くなり、耳や首筋までを薄紅に染める。もしかして目的を知られてしまったのだろうか。
動きを硬直させ、ユウリヤに強張った笑みを向ける。思った通りの素直な反応に、ユウリヤはふっと笑う。握った掌が汗ばんでしまっていた。