テキストサイズ

硝子の挿話

第12章 眷恋

「私はいつかユウリヤを照れさせること出来るのでしょうか?」
「さぁな、それはお前の頑張り次第だろ?」
 もう少しだけ、このまま二人きりでいたい。淡い希望がユウリヤの足を止めていた。
「はい!とっても頑張りたいと思います」
 にこにこと笑っていると、空も快晴に晴れるのだろうか。それも『姫神子』の能力なのだろうかと、他人事に思った思考を苦笑で沈めた。

「俺と違って照れやすい体質だから、きっと俺の方が見る数は多いだろう」
「だとしても負けません!」

 むんと片手を拳にして唇を引き締める。これは本気で言っているのだと解釈すると、ユウリヤおかしくてまた噴出してしまった。
「ユウリヤ?」
「ごめん…でも、なんでお前そんなに躍起になるんだ?」
 その訳を教えて欲しいと耳元で囁こうとしたのを、先手でティアが耳を塞いだ。
 繋いでいる方の耳は露だが、どうしようかと思案する目の動きで分かったティアが、いきなり片耳を押さえたまま一歩下がる。
 どうも運動能力などは、ティアには叶わないらしい。
「聞きたくない訳だな?」
「え!?」
 驚愕して両目を皿のように大きく見開いて、ユウリヤを見上げてきた。
「聞きたい?」
「はい!勿論です!」
 汗を後方に飛ばしながら、何故か力説具合のティアにユウリヤは溜まらず声を立てて笑った。
「そんなに俺の声が好きか?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ