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硝子の挿話

第2章 刹那

 丸い机に二人は向かい合わせに座わる。やっぱりココでも注目は当たり前に来た。
 そんなに珍しいのだろうか。双子が一緒にいるというのは。千尋の疑問は、千遼の一言にかき消された。

「ウザ!」

 一言吐き出すとストローを噛む。極端にイライラのボルテージが溜まっている証しにもなる癖だ。
「でも本当によかったんですか?今日の予定」
 もう周りを気にしても仕方ない。気にするから気になるんだと諦めた千尋に覗きこまれ、千遼はストーローを咥えたまま苦笑した。
 店内の温度は心地よく、エアコンの音が店内に流れるジャズにかき消されていく。窓から見下ろす喧騒はいつもと変わらない。
 千尋は窓から見える人々をみていた。
 ぼんやり眺めている下では、流れていく人が沢山居て、それは各個人―――誰でも『自分』という人生に歴史を持ち、それぞれの記憶には色んな舞台があって、いくつものドラマが存在している。
腕を組んだり、手を繋いだりして歩く二人はとても幸せそうだ。
「ハルちゃんも、ドラマしてますよねぇ…」





 窓の下を歩くいくつものカップル。千遼も彼氏が居るので、きっとあんな感じで歩いているのだろう。そう思って両手を組んで笑いかけた。
「ドラマって…ああた…いったい…何を?」
 飲んでいたのを噴出さなかっただけよかったと思いつつ、千遼は瞬間に脱力してしまっていた。
 千尋は時々周りの理解を超える表現を使うことがある。突飛的に言葉を出すこともあるので、気をつけないと恥ずかしさとかで噴いてしまうことがあるのだ。しかも語りだすと結構長い………多分、天然と言われる種族なのだろうと千遼は思っていた。
 そんな姉のことなど、まるで気がついていない千尋は、とうとう宇宙に交信するような仕草で嬉々として語りだす。

「それはですね!この宇宙が誕生した頃から始まっているのです!命溢れる地球が生まれ……」

 嬉々として話す千尋の視界が、逆行するように、一人の人間と視線が交錯したかと思うと釘付けにされた。―――彼もまっすぐに千尋を見ている。

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