硝子の挿話
第13章 約束
「お待たせしました」
一気に血流が勢いを増す。肩に力が入りかけた時、中庭から楽の音が聞こえてきた。
人々の喧騒が集まりだす。この音は間違いない―――ユウリヤの楽だ。邪魔にならないように、言葉ではなく音で側にいると伝えてくる。
サイバスは外へ視線を傾けて、何も言わずにティアへと向く。お茶を淹れてたのだと、差し出されたのは、鎮静作用もある薬用ハーブでカモミール。大地の林檎とも呼ばれて、色々とある効能に合わせて使用されていた。
「いい香ですね…」
背中を押してくれているみたいに、側に寄り添うような優しい音と、差し出されたカモミールの香に、悲鳴を上げていた心音が癒されて落ち着いてきた。
香高い優しい匂いを、肺腑(はいふ)に溜めて吐き出す。肩に入っていた無駄な力が抜けた気がした。
「ありがとうございます」
頂きます、と続けて一口飲むと独特の味が優しく広がる。器を手にしたまま、ティアは顔を上げるとサイバスもゆったりとした仕草で飲んでいる。―――広がる静寂は、次の静寂を招いて言葉もない。ティアが無意識に考え込んでしまっているのを、サイバスはまっすぐに視線を捕らえたまま笑った。
「貴女は少し考えすぎるとこがあるようだ…」
一気に血流が勢いを増す。肩に力が入りかけた時、中庭から楽の音が聞こえてきた。
人々の喧騒が集まりだす。この音は間違いない―――ユウリヤの楽だ。邪魔にならないように、言葉ではなく音で側にいると伝えてくる。
サイバスは外へ視線を傾けて、何も言わずにティアへと向く。お茶を淹れてたのだと、差し出されたのは、鎮静作用もある薬用ハーブでカモミール。大地の林檎とも呼ばれて、色々とある効能に合わせて使用されていた。
「いい香ですね…」
背中を押してくれているみたいに、側に寄り添うような優しい音と、差し出されたカモミールの香に、悲鳴を上げていた心音が癒されて落ち着いてきた。
香高い優しい匂いを、肺腑(はいふ)に溜めて吐き出す。肩に入っていた無駄な力が抜けた気がした。
「ありがとうございます」
頂きます、と続けて一口飲むと独特の味が優しく広がる。器を手にしたまま、ティアは顔を上げるとサイバスもゆったりとした仕草で飲んでいる。―――広がる静寂は、次の静寂を招いて言葉もない。ティアが無意識に考え込んでしまっているのを、サイバスはまっすぐに視線を捕らえたまま笑った。
「貴女は少し考えすぎるとこがあるようだ…」