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硝子の挿話

第13章 約束

 此処に来た理由はティアが言うまでもなく分かる。以前に指し示された案件だということ。
 サイバスは小さく笑うと、器を背後に置いて手をとった。

「学び舎を造りたいのであれば、何故どうして必要なのかを話せばいい―――神官として勉学を収めても、職にありつけずに溢れてしまう若者も多い」

 それは水耀宮が完全に、家系で仕事が決まるきらいがある為だ。家族が増えればその分だけ、神官候補は増えるが、辞める相手よりも希望者の数が多い。
 その為勉強が出来たとして、なれるのは一握りの幸運を持った者達のみだ。
 他のあぶれてしまった彼らは、酒や遊興に取り付かれてしまったものもいるし、それ以上の学問をと外へと出る者。数字や文字が書けない相手の変わりに、請け負うものと商人の手伝いをするものなども出たりしてした。
「彼らにとっても職種が増やせる機会だとも思うのです」
 間違っているかも知れない。余計なお世話もあるだろう。けれど人口は増加の一途を辿る現在、貧富の差は増すばかりで格差社会に変わりつつある。サイバスはあぶれた若者を招き、仕事を作っては少しずつ鍛えている所だ。
「そうだと私も思う…仕事を手伝ってもらえるので、楽までさせて頂いている」
 彼らがサイバスの信頼に応えようと励んでいる姿は、容易に想像が出来る。ティアはうっすらと笑うと、煌星(きらぼし)の輝きを放つ強さを宿した相手を見た。

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