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硝子の挿話

第13章 約束

「誰かの助けになりたい…多くを助けるには非力なら、仲間を同志を募っていけばいい」

「それがお誘いの理由か?」
 交わす手紙の中に。二度、三度とにおわせる文面が書かれていた。
 面と向かって、直接と交渉したかった訳は、自分自身の考えを聞いて欲しかったからだとサイバスは理解した。





 何度自分自身が歯痒く、自分を抱きしめて泣いただろう。ずっと長い間、気持ちをため続けてきた。
 ハクレイと知り合わなければ、泣いて自己責任もとれず。のうのうとただ生きているだけだった生活。
 それを変えてくれる相手と出会ったし、理解を示してくれる相手とも出会った。

「私は、どうしてもサイバス神官様の力添えが欲しいのです」

 草案は最初から暗礁に乗り出していた。これ以上悪くなることはあり得ない。
 長椅子から立ち上がったティアは、その場の床に座り頭を下げた。
「どうか、その才と財力を私に預けて下さい」
 信じて、一緒に世界を広げて欲しい。祈る気持ちで床に額を押し当てた。

「姫神子…」

 さすがに呆然としたサイバスは一瞬、何が起きたか把握できずに動きを止めてしまった。
「お願いします!一人でも多くの秀逸(しゅういつ)の同胞が必要なのです…っ」
 ぎゅっと瞼を閉ざして、切実な気持ちが胸を締め付ける。迷いながら一歩を、幾度も確かめて出すことさえも迷っていた。
「顔をあげなさい」
「………」
 ゆっくりと上げる額が少し赤くなっている。サイバスは側に寄ると赤くなっている額を撫でて苦笑した。

「貴女は水耀宮の姫神子………神官に頭を下げては駄目だ」

 勢いよく下げた時に外れた髪飾りを、手にしたサイバスは苦笑する。飾りを持っていない反対の手で、ティアの横髪に触れた。
「いいですか?ティア様」
 厳しさが強く側面に見えていたサイバスは、両膝をついてティアを見た。
「………お力添え下さいますか?」
 立つように促すサイバスが片手を支えてくれる。そのまま掌に口付けをした。
「ティア様の為に………そして亡き祖父が願ったことの為に」
 多くの民衆が理不尽に痛みつけられない為に。持てる力の限りで応えると、宣言し神との誓約を約束した。

「ありがとうございます…サイバス様」

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