硝子の挿話
第13章 約束
「お待たせしました…」
入ってきたサイバスに振り返る。しかし影はひとつではなかった。
「?」
「ティア様に紹介しましょう」
後ろについてくる影は、ティアとさほど身長が変わらないサイバスよりも、頭二つ分以上高い。長身に見合う筋骨隆々な肢体。引き締まっていて、武官のように映る。
サイバス自身の、護衛かと思っていると、至近距離に彼の姿もはっきりと見えた。
「トーボイと申します」
挨拶をしろと促され、トーボイはティアに笑いかけた。
「始めまして、姫神子さん!俺はトーボイ!身体を鍛えることが趣味な、今年22歳の恋人募集中!!」
そう言って軽快な笑いと、差し出された右手。皮が厚くなった掌と本人を比べる。思わず自己紹介に唖然としてしまった。
「あ…」
そう言って差し出した手が、そのまま遠くなっていく。事態が把握出来ないティアを残し、サイバスがトーボイの耳を掴み引きずっていた。
「いたいいたいいたい…っ!サイバス兄ちゃん痛いって!!」
「黙れ!」
そのまま連れ去っていく影。
控え室の扉だろう。その前に来るとくるりと顔を向けた。
「暫しお待ちください…」
ティアの顔から血の気が半分ほど引いていく。それはどういう意味ですか?と聞く前に、トーボイが中に入ると、ぱたんと無常に扉は閉じてしまった。
「え…えええ、ええええ…っ!」
慌てて二人が去った方へ、ティアも急ぐ。まったく状況が分からなくなってしまった。
「私が悪かったのでしたら、あの謝りますがっ!!理由を…っ!」
どうやらティア自身が、理解出来ないまま困窮した状態に陥ったらしい。扉の前で右往左往していると、室内から声が聞こえてきた。
「お兄ちゃんは!お前をそんな子に育てたつもりはない!!」
「挨拶しろって言うからしたんだろうっ!?」
「どこの世界に宮の頭に、あんな軽く挨拶するヤツがいるというんだっ!?」
どうやら兄弟喧嘩だ。ティアは一瞬胸を撫で下ろすものの、はっとする。
「やはり喧嘩はよろしくないです!」
納得しかけたのを改めて、扉の前に立つ。呼吸を整えながら、扉を軽く叩いた。
「今取り込んでおります」
「そんな、ちょっと待って下さいっ!喧嘩は駄目です、喧嘩は…」
入ってきたサイバスに振り返る。しかし影はひとつではなかった。
「?」
「ティア様に紹介しましょう」
後ろについてくる影は、ティアとさほど身長が変わらないサイバスよりも、頭二つ分以上高い。長身に見合う筋骨隆々な肢体。引き締まっていて、武官のように映る。
サイバス自身の、護衛かと思っていると、至近距離に彼の姿もはっきりと見えた。
「トーボイと申します」
挨拶をしろと促され、トーボイはティアに笑いかけた。
「始めまして、姫神子さん!俺はトーボイ!身体を鍛えることが趣味な、今年22歳の恋人募集中!!」
そう言って軽快な笑いと、差し出された右手。皮が厚くなった掌と本人を比べる。思わず自己紹介に唖然としてしまった。
「あ…」
そう言って差し出した手が、そのまま遠くなっていく。事態が把握出来ないティアを残し、サイバスがトーボイの耳を掴み引きずっていた。
「いたいいたいいたい…っ!サイバス兄ちゃん痛いって!!」
「黙れ!」
そのまま連れ去っていく影。
控え室の扉だろう。その前に来るとくるりと顔を向けた。
「暫しお待ちください…」
ティアの顔から血の気が半分ほど引いていく。それはどういう意味ですか?と聞く前に、トーボイが中に入ると、ぱたんと無常に扉は閉じてしまった。
「え…えええ、ええええ…っ!」
慌てて二人が去った方へ、ティアも急ぐ。まったく状況が分からなくなってしまった。
「私が悪かったのでしたら、あの謝りますがっ!!理由を…っ!」
どうやらティア自身が、理解出来ないまま困窮した状態に陥ったらしい。扉の前で右往左往していると、室内から声が聞こえてきた。
「お兄ちゃんは!お前をそんな子に育てたつもりはない!!」
「挨拶しろって言うからしたんだろうっ!?」
「どこの世界に宮の頭に、あんな軽く挨拶するヤツがいるというんだっ!?」
どうやら兄弟喧嘩だ。ティアは一瞬胸を撫で下ろすものの、はっとする。
「やはり喧嘩はよろしくないです!」
納得しかけたのを改めて、扉の前に立つ。呼吸を整えながら、扉を軽く叩いた。
「今取り込んでおります」
「そんな、ちょっと待って下さいっ!喧嘩は駄目です、喧嘩は…」