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硝子の挿話

第14章 明言

 いつもはどれだけ暗い顔をしているのだろう。ティアは己の迂闊さを嘆きたくなるが、そんなのは後でいいと淡く微笑みを浮かべた。
 楚々とより優美に一歩一歩を進めていく。
 心音はあれほど騒いでいたのが、嘘のように静まりかえっている。後ろに着き従ってくれる相手が、ヒリッシュだからだと、感じる肌で思うのだ。





「語る話をヒリッシュも近くで聞いて欲しい。………今の部署を移るのはお嫌ですか?」
 足りない力を与えてくれる相手だと、ティアの直感が囁いた。
「どういう意味ですか?」
 平淡な声が答える。意味を図ろうとするのが感じた。
 ティアは振り向かずに続けた。
「そのままです。今すぐ、でなくていいのです………私の話を聞いた上で、自身に偽りのない判断を下さい」
 ヒリッシュの反応は後ろを見て居ないから分からないが、きっと戸惑いと驚きがあるだろうとティアは考える。直接触れ合える位置にいる巫たちとは、どこか違う。

「常に冷静さで、判断してくれる相手が私には必要なのです」

 軽く振り返って笑う。自然と笑みが出た。
 ヒリッシュは『信じれる』と、あまり会話を交わしたことはなかったから、突然すぎる言葉は自分でも正直驚きはあった。
「…推薦は誰ですか?言いたくないなら無理には聞きません」
 推薦には思惑が絡み付いている。それをティアも知っているので、問い詰めたい訳ではないと伝えたつもりだ。

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