硝子の挿話
第14章 明言
神子が誕生する意味を、もっと深く考えてもいいのではないかとティアは思う。それだけ今の世の中が切羽詰って、悲鳴を上げているのだと、解釈できる者の少なさに、ティアは溜息も出なかった。
ちらりと銅鑼を鳴らす者を見る。一番豊熟し、腐りだしているのは、目の前にある妄執にしがみついた老獪な神官たちだとティアは冷静に眺めていた。
まだ後には会見もあるというのに、来客を待たすだろう空気が広がっている。
静粛を告げる銅鑼は鳴らない。
それも裏からの魔手が伸びている証かと、気概が殺げ始めたティアの視界で、扉が大きな音を立てて開いた。
叩きつける、と表現すると似合う音に、周囲は一瞬だけ静かになった。
扉を開けたのはトーボイ。その脇からゆったりとした仕草で、サイバスが入ってきた。
「始めます」
一瞬の静まりを、ティアは利用する。それを狙っての、扉の開閉だと思うのだが、開いた本人であるトーボイの力が強いのもまた恐らく事実。微笑をサイバスに向けて一同へ向き直った。
「皆々様、今宵遠くからの集まりに感謝します」
一度ティアが口を開いた後の私語は、刑罰があるほどに禁じられている。なんとも言えずに喉を鳴らす音が、ティアの耳にも届いた。
「二年に一度の評議を始めたいのですが…その前に各村や町を治めて下さっている方々には、提出を願った書類が数点あります」
以降の改革をする為に、相談して最低限必要だと思われた物を提出させた。
ちらりと銅鑼を鳴らす者を見る。一番豊熟し、腐りだしているのは、目の前にある妄執にしがみついた老獪な神官たちだとティアは冷静に眺めていた。
まだ後には会見もあるというのに、来客を待たすだろう空気が広がっている。
静粛を告げる銅鑼は鳴らない。
それも裏からの魔手が伸びている証かと、気概が殺げ始めたティアの視界で、扉が大きな音を立てて開いた。
叩きつける、と表現すると似合う音に、周囲は一瞬だけ静かになった。
扉を開けたのはトーボイ。その脇からゆったりとした仕草で、サイバスが入ってきた。
「始めます」
一瞬の静まりを、ティアは利用する。それを狙っての、扉の開閉だと思うのだが、開いた本人であるトーボイの力が強いのもまた恐らく事実。微笑をサイバスに向けて一同へ向き直った。
「皆々様、今宵遠くからの集まりに感謝します」
一度ティアが口を開いた後の私語は、刑罰があるほどに禁じられている。なんとも言えずに喉を鳴らす音が、ティアの耳にも届いた。
「二年に一度の評議を始めたいのですが…その前に各村や町を治めて下さっている方々には、提出を願った書類が数点あります」
以降の改革をする為に、相談して最低限必要だと思われた物を提出させた。