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硝子の挿話

第14章 明言

 思ったとおりだ。この男から出るだろうと想定してた言葉は、ティアの範囲内であると同時に、ひとつの疑惑も生まれた。
 ティアに刺客を送っている相手ではないかと、サイティアやタルマーノが調査してくれていた中に彼が入っている。ティアは証拠が無ければ動けない。けれど彼の瞳は雄弁に殺意を伝えていた。
 ティアが存在しなければ、彼の孫娘であるカンテラが巫女に選ばれていた事実。そして彼女自身から向けられる嫌悪。幾度か話しかけてたりして、友好関係を築こうとティアはしていた。
 それを悉(ことごと)く潰して、他の巫に大声でティアの心を握りつぶしてきた。
 向けられる刺客は、自分ばかりではなく、護衛が仕事であるとはいえ、大切な家族にまで危険を及ぼす。それならば、この場で先手を打ちたい。―――けれど焦っては駄目だ。

「では先に貴方に詰問いたしましょう」

 藪をつついて蛇を出す真似をするほど、頭に血が上っている。
「二番目に大きな街を治めて頂いていますが、あの書類はどういうことでしょうか?」
「提出したままだが?」
 嘲る眼差しと笑い。ティアはヒリッシュへと視線を落とす。
 言わなくても差し出す板を受け取って、ティアは並ぶ数字を冷静に見た。
「実は去年、病死の数があまりにも多い様子で、医師の数が足りて居ないのなら緊急を要すると思い…内々に調べさせて頂きました」
 静かに言ったティアの言葉を、周囲は驚愕で聞いていた。

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