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硝子の挿話

第14章 明言

 当然だろう。今まで全ての実権を、所有神官に任せるところを翻して、だったのだから。

「『いつか』それでは遅いのだと、貴方が教えてくれました」

 まだ意味が分かっていないらしい相手を、まっすぐにティアが見ると、急にそわそわとしだす身体。瞳も一点に定まっておらず、左右に揺れ視線を反らそうとしていた。

「申し開きを聞きましょう!」

 凛とした響きが、水を打ったような室内に広がる。逆にティアの心音は張り詰めていた。
 足元が震えそうになるのを、ヒリッシュの瞳が、制してくれていた。
「豊かな水源と生命溢れる緑が広がる温泉街を、どう扱ってきたのか………自分の目でお確かめなさい」
 それもヒリッシュは分かっていたらしく、一枚の板を呆然として立ち尽くす彼に差し出した。
 暗殺のことに関してはまだ裏を必要とはしない。失脚できる札と用意した暴虐の限りが綴られた一枚の板。
 流通に掛かる税を手始めに、温冷泉利用税、通行税、流れる温泉に加算される水量税…もっとある。
 並べる野菜や果物ひとつひとつにも税を加算していた。

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