硝子の挿話
第14章 明言
「はい」
タルマーノが元、神官だった男を引きずって去っていく。しかし重いのか歩みは遅く、見かねたサイバスがトーボイを見ると、頷いて片足を持つ。二人が室から出て行くまでを見送ると、ティアは席へと戻った。
「さて、評議に入る前に他にも不信を覚える箇所、提出されていない方…理由をどうぞ述べて下さい」
一同をじっくりと見ると、誰も何も反論がない。
誰が初めにしたのか、両膝をついて叩頭叩首の体勢をサイバスを除く神官がする。もう一番大きな山は通り過ぎた。
後はティアが思うよりも、楽な流れで進み、全てが終わるまでの時間は予想よりも短い。
月の位置を確かめてみるが、もう夜も随分深いようだ。
「今宵はここまでにしましょう…皆に飲み水を振舞って下さい」
一段落を終える。銅鑼が高らかに鳴り響くと、登場を待っていた使い女の、下働きを専門にする女性達が、大きな瓶を持つ男たちの後ろから出てきた。
果物は今日の間に収穫したという糖度の高いバナナ。今日の来客が、送ってくれた珍しい果物だ。
「後は私に任せて下さって大丈夫ですよ」
「では、サイバスに任せます」