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硝子の挿話

第14章 明言

 周囲に聞こえるように言うと、ティアはヒリッシュを引き連れて出て行く。
 客人の元へと急ぐ為に、扉を出て暫く行くと、周囲をきょろきょと伺う。そして裾の長い衣を捲り上げた。
「時間が惜しいです…走りますよ」
 言うと同時に駆け出す。ヒリッシュは笑みを浮かべて、その後をついて走った。
 此処から面談の間までは、それほど距離はない。今日の所は太陽宮に行く道すがら、ハクレイの意向で寄ってくれたに過ぎず。あまり遅くまで待たせる訳にはいかない。
「私の失敗です…っ!今日の評議をいつものように考えて、安易に了承を出してしまうなんて………どうしましょう」
 無意識に出た言葉をヒリッシュが聞くが、独り言のようなので答えない。この角を曲がれば目的地にたどり着く。

「お待たせ致しました」

 ヒリッシュが扉を叩くと、中に控えていた相手が扉を開いた。
「まぁ…ハクレイ様までいらしていたのですか?」
 かなり驚くティアに、ハクレイは頷いて苦笑した。
「一応出る前に連絡しようと思ったら、ティア様が居られないしで……申し訳ない限りです」
 連絡があった時というと、間違いなくユウリヤと二人で居た。
 何も言われていないのにティアの顔に赤味が差した。

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