テキストサイズ

硝子の挿話

第15章 暗夜

 考えても判らない。

 当日を含め、ユウリヤが奏でる音に抱かれて舞うのは、ただ楽に合わせて、舞うよりも意味を持つ。
 考えを背けても、また覆いかぶさってくる不安は、言葉でなく心に直接告げているようで、恐ろしい。
「祭りが終わりましたら、キュルにそのこと報告いたしますね…」
 恐れを口にするのをつぐみ、一時の別れを、見える海に告げる。風が、どうかキュルへ言葉を届けてくれますように。



 神殿へ戻ると、怯えと騒ぎは頂点にあり、上へ下への騒ぎになっていた。
 そして当日来る予定だったセツレイが、来れないと伝える急使が来た。
 太陽宮のある北地方にそびえる霊峰。―――人々は『聖なる山』と呼び、愛し信仰も深いこの大陸一、高い山の頂上付近一帯に、汚物のような黒い雲が漂い、周辺一帯がどす黒くなっていると連絡がきた。
 星祭の日程を変えることは出来ない。これは暦を作る上で設けられた特別な日だからだ。今も太陽宮は対応に追われているらしい。
 緊急に三宮の兵を各地に配置するようにとの要請だった。
 祭りが無事終了するまでの間は、天候が神がかりをおこしているのだと、住民の不安をねじ伏せたとも聞いた。

 全体的に暗い空の下。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ