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硝子の挿話

第15章 暗夜

 太陽宮では大司祭ルキアを中心に、大半の重鎮が太陽宮に留まり、状況に対応するらしい。また月空宮でも似たような感じで、司祭主であるメイスは動かずに、待機をしているという知らせが水晶を使って伝播された。

「星祭に関与した騎士以外と、衛兵などと協同で動くようにも指示をしてます」
「そうですか…」

 星祭の宴が開かれるまでに、把握できる情報と、的確に指示できる状況をサイバスは築いていたようだ。
「ありがとう…貴方の協力を得て本当に良かったと思います………きっと私一人では出来ませんでした」
「いえ、本当なら避難勧告を優先にしたいのですが、ティア様もユア様もアトランティスの光であり、民衆にとっては絶対の生きた神。―――いざとなったら非難誘導は流します」





 若干青ざめているのが分かる頬を、サイバスは柔らかく撫でた。
「動揺は殺しなさい。舞台の上から冷静に状況を判断出来なければ、多くの死傷者が出るんです」
「…はい」
 きゅっと唇を噛み締める。確かに言われる通りだと、ティアは深呼吸を繰り返す。
 二度、肩を叩き疲れている表情を見せずにサイバスは笑った。
「冷静に落ち着いて判断出来るかが、私たちにとって今求められることです。………星祭を希望と受け止めている民衆も、数多く居る事実を受け止めなければなりません」

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