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硝子の挿話

第15章 暗夜

「ハクレイの叔母よ…双子だったから似ているでしょうね」
 柔らかく笑う姿は、ハクレイがもっと滑らかに、成長した先の姿。赤く薄い唇は禍々しいほど、妖艶さを放っていてティアは一瞬だけ気後れしてしまう。
「一族から削除された名前で呼ばれるなんて、何年振りなんでしょうね…」
「あの…」
 どういう用件で来たのか、ティアの瞳に焦りが浮かんでいる。星見であるユリシスは、小さく頷いて指先を伸ばし、ゆっくりと方角を指した。

「………あの山まで、走りなさい」
「え?」

 意味が分からずきょとんするティアが、指し示された方角を見ている間に、ユリシスの姿は忽然と消えた。
「ユリシス様?」
『私から最後の予言です…あの山まで走りなさい。聖なる山に続いて高いあの場所までは汚されない』
「意味が分かりません!」
『私は別のことをしなければならないから、助言だけ………足掻きなさい』






『足掻きなさい』



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