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硝子の挿話

第15章 暗夜

「生きることを諦めないで、抗って下さい」

 ティアは視線を上げた。
 意図する意味に気がついたようで、サイバスは小さな笑みを浮かべると手を離した。






『いきなさい』


 前司祭もそうティアによく諭すように言いながら、髪かきあげて笑っていた。
 ティアは、細く枯れ果てた握る力さえ失いだした手を持って、何度も頷いて返していた。
 辛さは生きている上での香辛料だと、泣いていた幼子を抱きしめてあやしてくれた。
「はい、諦めません…サイバスも皆にも諦めて欲しくありません」
 きっぱりと言い切れる毅さを、この年でようやく手にすることが出来た。

 まだ何も始まっていないし、何も終わってなどいない。

「夕餉はご一緒できますの?」

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